ゴライアスオオツノハナムグリの飼育考察 Goliathus goliatus


 

旧ブログで投稿したゴライアスのブリード考察の記事について、幼虫と成虫を大きくするという点に着眼して見直しました。

基本的な幼虫飼育やワンダリング後の管理方法についてはほぼ問題のないレベルに来たので、ここ2年ほどはいかにすれば幼虫が大きく育つかという点に着目して試行錯誤を重ねました。2024年の結果は幼虫の最大体重84g、土繭径91mm、成虫サイズ85mmで、惜しくも90mmを越えることが出来ませんでした。今年はクワドリのフルホワイト個体を種親として、幼虫体重90gオーバーを目指したいと思います。


1.温度管理

 室温の管理は、通年を通してエアコン設定22度で、棚の位置によって冬季18-22度、夏季22-26度と多くの飼育種に対応するため温度分布にムラが出るようにしており、ゴライアスの幼虫は22度前後のところに置くようにしています。

カメルーンの年間気温推移と、84gの幼虫体重推移と照らし合わせて表にしました。



カメルーンでは、乾季となる11月~翌2月までが成虫の活動時期となっています。年中エアコン管理された部屋でブリードを続けていると自然のサイクルとずれてしまうことがしばしばありますが、どのような虫であっても羽化時期や産卵時期など、できるだけ自然環境に合わせた方が良い結果に繋がるのではないかと思っています。偶然と言えますが、冬場にエアコン管理された室内はやたらと乾燥するので、ゴライアスには合っていると言えそうです ( ´∀` )


上記の表から、自然界では11月頃から小型のオスやメスが活動を始め、早いもので12月には初令幼虫となるのではと想像します。

比較対象の84g幼虫は9月孵化でしたが、結果的には自然界のサイクルに合わせて10月に羽化し、1月に活動開始しています。幼虫の成長段階では12月から急激に成長し、その後4-5カ月を経て84gになりました。

理想の幼虫期間という行に記載の通り、飼育環境下における理想は12月に孵化し、1年後の1月に羽化させれば自然サイクルと合致させることができ、大きな幼虫サイズが望めるのではないかと思われます。


2.幼虫ステージ(L1→L3)


 <初令L1>

飼育容器は200ccのプリンカップにカブトマットを半分ほど入れ、極度なマットの乾燥に気を付けながら飼育します。

この時サプリを与える必要はありません。早くから食べる幼虫もいますが、逆にサプリでマットが再発酵し幼虫の死亡リスクが高まるからです。カブトマットだけで安定して成長しますが、キノコバエを発見した場合は、容器ごと新しいものと交換します。


 <2令L2~3令L3>

2令からサプリを与え始め、3令で30gを越えると、容器を1500ccクリアボトルに移し替えます。カブトマットは容器の1/4程度と少なめにしますが、これはサプリを効率良く食べさせるためです。

サプリを食べる量は幼虫によって異なるため、まずは1粒入れてみて食べるかどうかを観察しながら分量を増やしていきます。

3令中期になってくると、サプリの食いが良くなってきますので、2日おきに食べきったか観察しながら、与える量を更に増やします。

中にはサプリを爆食する幼虫がおり、こういった幼虫は特に大きく育ってくれます。


サプリの食べ残しが多くなるとマットが再発酵したりダニが湧きますので、定期的にマットを全交換します。1か月に一度は全交換を推奨いたします。(ただこのマット交換がワンダリングの引き金になることが多いと感じますので、交換前のマット水分量を変えないなど注意が必要です)


 <ワンダリング>

幼虫が容器内をよじ登る仕草を見せ始めたら、ワンダリングをしていることになります。



ワンダリングを見落として2週間もすると、幼虫が繭を作るために蓄えた糞を体外に出してしまい、マット上で死亡することがありますので、3令後期になってくるとワンダリングを見落とさないよう観察する必要があります。

ワンダリングした幼虫は別に用意した羽化ビンに移動します。羽化ビンには篩にかけた真砂土を適度に加水したものを使います。この時、カブトマットは必要ありません。



幼虫体重が80gとすると、80㎜以上の成虫サイズが欲しいところですが、羽化ビンに投入してから2週間ほどで繭を形成したものと、繭形成まで1か月かかったものでは、違いが出てくることが分かりました。繭を形成するまでに1か月もかかると幼虫が痩せてしまうということです。ではなぜ繭を形成するまでに時間がかかるのか、それは繭を形成できるための粘着性の高い糞が体内に蓄えられていないからではないかと考えました。

対策として、幼虫の飼育マットに赤土を少量混ぜて飼育していますが、最終体重71gの幼虫が、85mmで羽化していますので、それなりの結果が出ているようです。(赤土を混ぜる理由はアフリカの土壌が赤土であるためです)

もちろん、羽化ビン用の土の質(粒子の細かさ、水分量)、環境温度、幼虫時のサプリも関係してくると思います。


3.蛹、羽化のステージ


繭を作ってから羽化までにメスで約4か月、オスで5か月かかります。早く羽化した成虫を見たいところですが、自力ハッチしてくるのを待った方が良いことが多いです。




なぜなら羽化したばかりの成虫は雑菌に弱く、稀にですが割り出した直後に突然死するリスクがあるからです。

これは、ヘラクレスやクワガタなど他の虫でも同じことです。せっかく羽化したのに雑菌の付いた手で触って死なせてしまっては可哀そう。万一取り出してしまった場合は、水苔をたっぷり入れた容器に移して管理してください。


半年待っても出てこない場合は繭の中で死亡していますので、割り出して確認しますが、ワンダリングのところで書いた通り、繭を形成するまでに1か月以上かかる幼虫もおり、当然羽化までの期間も長く見る必要があります。

自力ハッチしてからすぐに後食開始し、更に1か月ほど経過した頃、ブリード適期になります。


4.終わりに

ゴライアスの飼育は世界中で行われており、海外ではゴライアス専門のショップまで存在しています。愛される理由としてアフリカ最大のカナブンで格好良いということが一番の理由だと思いますが、簡素な飼育マットやドッグフードがあれば幼虫を育てられるという飼育が簡単であるというのも理由に挙げられると思います。

ただ100ミリアップの個体は稀にしか出現せず、まだまだブリード技術が十分に確立できたとは言えない状況です。ヘラヘラや国産オオクワのようなブリード水準には程遠いです。

その意味でも、ゴライアス飼育はまだまだ楽しめる領域にあるかと思います。


目指せ100mmアップ!ブリード技術を切磋琢磨しつつ、このハナムグリの王様 ゴライアスオオツノハナムグリの飼育を楽しみましょう。


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